ソムリエール川西のワインにまつわるエトセトラ | Qualiter Letter

フランス、ガスコーニュ地方のワイナリー 「プレイモン」訪問記 その2

首を長くして待っていただいていた方も、
大多数の「別に待ってませんが?」という方も、1ヶ月お待たせしました♪
ガスコーニュワイナリー訪問記その2です。 (その1はこちら

この日は、政府から歴史的モニュメントに認定されているという
サラガシ村にある葡萄畑を視察。



  畑の入口には「Monument Historique」の立札が。

 

何故ただの葡萄畑が歴史的モニュメントに認定され、守られているのか?
その理由は大きくわけて、みっつ!

 ・その1
 接ぎ木していない100%プレフィロキセラで樹齢100年以上の葡萄樹が植えられている。
 ※フィロキセラとは…
 ご存知無い方の為に少々注釈を。
 フィロキセラとは葡萄樹に寄生する昆虫で、主に根に寄生し、
 耐性の無い樹は枯らしてしまいます。元々アメリカに生息する虫でしたが、
 1800年代にアメリカから輸出された葡萄の苗木によってヨーロッパに入り、1863年に大繁殖。
  ヨーロッパの葡萄畑のなんと2/3ほどに壊滅的な打撃を与えました。
 あ〜恐ろしい・・・。
 アメリカに生息する虫だった為、既にアメリカの葡萄樹は耐性を持っていましたので、
 被害に遭いやすい根の部分はアメリカの台木を使用し、
 ワイン用の葡萄を接ぎ木して栽培するという対策が取られました。
 そのため、現在のヨーロッパの葡萄樹はほとんどがフィロキセラ以降の
 接ぎ木したものであり、フィロキセラ前「プレフィロキセラ」の葡萄樹は
 非常に貴重に扱われています。 

 ・その2
 わずか0.2ヘクタールの区画に20種以上の葡萄品種
 (うち7種はいまだ不明)が植えられている。

 ・その3
 現在ではほとんど見られない昔のスタイルの植樹
 (樹間隔 縦横2m、ちなみにボルドーは約1m)
 昔は雄牛を2頭並べて畑を耕していたため、葡萄の樹は2m間隔で植えられたのだそう。


そんな貴重な畑で取れた葡萄で作ったワイン♪
ぜひ飲みたい、飲みたい、飲みたいっ!
となるのはワイン好きの常でございます。

しかーしっ!残念ながら、この畑で作られたワインは販売していないんだそうです。
小さい区画で樹齢も非常に高い葡萄樹ばかりなので、
少量しか収穫できないのも理由の一つかもしれません。

でも、そうなると別の疑問が。
「ワインを売らないのに、なぜ畑を管理し、手入れしているんですか?」ということ。
上品な表現にしましたが、言葉の裏は
「儲からない、人手と管理の手間ばかりかかる赤字の畑を持っていて大丈夫ですのん?」
ということ。

しかし、「プレイモン」の案内役をしてくれたアナイスさんの説明で、
下世話な疑問を持った私は大反省することとなります。


アナイスさん


   ガスコーニュの民族衣装ベレー帽が似合うアナイスさん(左)


「確かにこの畑は全く収益をあげられないけれども、プレイモンはこの貴重な畑、
葡萄を今後残していくべき遺産として保存し、品種多様性を守っています。
世界的にワイン産業が広がり、
ポピュラーな品種がビジネスとして好まれるようになりました。

しかし、すべての葡萄が植え替えられ、シャルドネやメルローばかりになると、
今後未知の病害や寄生虫の問題が起きた時に対応できない。
そういった観点からも品種の保存は未来のワイン作りにおいて重要なことと考えています。
現在もプレイモンの研究機関で解明されていない品種の研究は続けられているんですよ。」

「なるほど…(感銘をうける井上)」


なんと崇高で重要な使命を持っておられたんでしょう。
すぐにお金の心配をしてしまう自分のスケールの小ささを
思い知らされることとなりました。

そうです!仕事とは使命感を持って行うこと。
社会に何らかの形で貢献する事こそ、重要な仕事なはずですよね。
父さん、母さん、僕はどうやら都会で擦れてしまっていたようです…
ガスコーニュのワイン生産者の思いと広大な自然、澄んだ空気に触れ、心もリフレッシュ。
おかげでピュアなハートを取り戻しました♪

そして、翌日。
早朝からマルシェで待ち合わせ。

  誰と?

ガスコーニュの有名シェフ、リシャール氏です。
今日のランチはリシャール氏と共に自分たちで作ります。

 
買い物中、馴染みの肉屋さんで話すリシャールさん。
本当にフランスのマルシェの野菜の陳列は彩り鮮やかです。
 

メニューは
スープ ド シャテーニュ(栗のスープ)
ほろほろ鳥のメダイヨンロースト
−マッシュルームのファルシとポチマロンのピューレ
苺のサバイヨングラタン
時間が余ったので作ったマドレーヌ

リシャール氏はとってもフレンドリー。楽しく調理は進みます。

調理中のヒトコマ
マドレーヌを作る際に私がバターを混ぜるときにほんの少し
(ほんとにほんとにほんの少しです)こぼしてしまいました。
リシャールシェフは「全然問題ないよ」
ということで調理は進み、焼きあがったのをシェフが試食。

感想は、なんと
「ちょっとだけバターが足りないな」
こっちを向いてニヤリとするリシャールシェフ。
この憎めない絶妙の意地悪さはフランス人ならでは。
ほんと素敵な人です(苦笑)

そんな中、お話しいただいたのが
「今日料理するほろほろ鳥も苺も近くでとれたもの。
現地でとれたものを料理するのがフランス地方料理の基本なんだ。」
と、お話しいただきました。

フランス料理のみならず、各国の料理に言えることですが、
物流と技術が発達した現代において、便利が故に忘れられがちなこの基本原則。

文化を守っていくためにも、当たり前のことを「ちゃんとする」ことって大事だと思います。
日本に帰ってからも心に留めておきます。

調理は進み、途中からはマダムとワンちゃんも合流。
本当に美味しく楽しいランチタイムを過ごしました。

マダム クリスティーヌさん(左)
リシャールシェフとワンちゃん(右)
 

素敵な歌声のワイングローワーの合唱隊も、
美味しかったビゴール豚ハムの鉄板焼き屋台のことも、
まだまだ楽しいことはあったのですが、書ききれませんでしたが、とめどないのでこの辺で。

この合唱隊、皆さん全員本職は葡萄栽培家だそうです。
お祭り屋台さながら。素朴で美味しいんです♪
 

短い滞在期間でしたが、出会ったすべての人が優しく、
素敵な方ばかりで本当に素晴らしい時間を過ごさせていただきました。

皆様も機会があれば偉大なる郷土料理の宝庫、
骨太ワインや掘り出し物ワインが盛りだくさんのガスコーニュを訪れてみてください。

そして現地の食に触れ、素敵な人たちと過ごしていると、
いつのまにか時間の流れが変わって感じられたり、
生活の中で大切なことが変わってくるかもしれません。

また、今回訪問した「プレイモン」はそんなガスコーニュ地方の文化、伝統を守り、
その地で生活し、日々畑に向かう生産者が結集したワイナリーです。

彼らが背負っている使命感、ガスコン魂が込められたワインの味わいは、
まさにガスコーニュ人の気質そのもの。
質実剛健で勇敢かつ頑固者、情に厚く、底抜けに優しい。

昨今、葡萄品種やワインの味わいは世界的に標準化して来ています。
そんな中、プレイモンのワインは、流行り廃りにおもねらない、
他のワイン産地では決して味わうことのできない、ガスコーニュの大地、葡萄、
ヒトだからこそ生み出される味わいにこだわり抜いています。

それは、まるで現代において忘れてはいけない
大切なものを教えてくれているかのようです。


本当に訪れることが出来て良かった。
そんな旅でした。





フランス滞在中、きれいな虹を見ることが出来ました。

なんだかよいことがありそうです♪
さあ、皆さん!今宵もワインと共に人生を謳歌しましょう!!




追記
読んでいただいてると遊んでるようですが、
ちゃんと仕事で行ってますので誤解のありませんよう(笑)



ビストロ・ダ・アンジュ ソムリエ 井上 剛



JUGEMテーマ:ワイン

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